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研究室生活のチュートリアル

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研究室チュートリアル

はじめに

この文章では,大学の研究室に所属する学生に向けたチュートリアルや役立つ情報をまとめています. 同様の目的で書かれた書籍には

  1. E・M・フィリップス,D・S・ピュー著,角谷 快彦訳,「博士号のとり方[第 6 版]―学生と指導教員のための実践ハンドブック―」,名古屋大学出版局(2018)
  2. ピーター・B・メダワー著,鎮目 恭夫訳,「若き科学者へ (新版)」,みすず書房(2016)
  3. 石原 尚,「卒論・修論研究の攻略本―有意義な研究室生活を送るための実践ガイド―」,森北出版(2021)

などがあります. 1 は定評のある書籍で,私自身も大学院時代に読んで非常に学ぶところが大きかったです. 2 は原著が出版されたのが 1981 年と古い本ですが,その内容はいまも普遍的に通じるものだと思います. 私自身が博士後期課程に進学して大学教員としてのキャリアを進むにあたり,精神的な心構えを学んだのはこの本を通じてでした. 3 は最近出版された書籍で,より読みやすいと思います.

また,ネットで読める文章には

  1. kaityo256: lab_startup(慶応大・渡辺先生)
  2. Hiroyuki Ohsaki:充実した大学・大学院生活のための 100 のヒント (草稿)(関西学院大・大崎先生)
  3. 発声練習:卒業論文、修士論文関連のエントリー

などがあり,どれも非常に有用です. この文章も,将来的にはこれらと並ぶような情報を提供できれば,という目標のもと書き足していく予定です.

なお,本稿の内容はあくまでも理工学系で流体力学,とくに乱流の理論・数値計算系の研究をしてきた執筆者(荒木 亮@東京理科大学)が自身の経験をもとにまとめたものなので,分野や大学が違うとまた異なる文化があると思います. また,論文雑誌の例や使ってきたソフトウェアなども執筆者の専門分野に偏っていることに注意してください.

目次

  1. PC・ソフトウェア関連
  2. 論文や教科書の読み方関連
  3. 研究の進め方関連
  4. 対外発表や原稿執筆関連
  5. リンク集

PC・ソフトウェア関連

PC の設定方法

私は Linux(Ubuntu)を入れた PC を研究に使っています. 理論や数値計算系,とくに一日中サーバやスパコンにつないでいるのであれば,研究用の PC を Linux にするのは考慮に値する選択肢だと思います(が,バイアスがかかっているかもしれません). 実験系は装置の制御ソフトが Windows のみだったりするので要注意です.

私の PC の初期設定やソフトウェアの設定はUbuntu の初期設定とソフトウェアのインストール・設定にまとめています.

数値計算コードの書き方

どのような分野でも,数値計算を使って研究を進める人は伊理 正夫,藤野 和建,「数値計算の常識」,共立出版(1985)を読んでおくと良いでしょう. 非常に古典的な本なので,例えば当時と現在で計算機の性能には雲泥の差がありますが,数値計算を使う人にとっては「常識」であるべき事柄がよくまとまっています.

使用する言語は「言語ありき」ではなく自分の目標を最も簡単に達成できるものを選べばよいですが,例えば研究室内で使っている人がいないものを選ぶといろいろとしんどいと思います. なお,私がおもに使っている言語は:

  • Fortran:スパコンを使う大規模並列計算およびポスト解析
  • Python:ローカルのパソコンで可能なデータ処理および Matplotlib を用いた可視化,グラフ作成
  • Julia:テスト計算や簡単なモデルの数値計算とポスト解析

ですので,これらを使うのであればサポートができます. その三言語の勉強方法について,プログラミングの勉強にまとめているので参照してください.

Note

TBA:

  • 写経・自分なりに改善しつつ再実装すると勉強になるオープンソースのリポジトリ
  • 「モダンな」数値計算ソフトウェアの開発環境
  • サーバの使い方(ログイン/ファイル移動/計算ジョブの投入/...)

数値計算の tips

研究や論文執筆での GitHub の使い方

研究でプログラムや原稿といったテキスト形式のソースコードを編集するときは,必ずバージョン管理ソフトを使いましょう. そのご利益にはさまざまなものがありますが(参考:kaityo256: 数値計算屋のための Git 入門),

  • いつでも(自分でマークした)過去のバージョンに戻すことができる.
  • 複数の機能を並行して実装したり複数人で並行して開発することができる.

が非常に大きいです. バージョン管理ソフトにもさまざまなものがありますが,もっとも広く使われているGit/GitHubを使うのがよいと思います. 簡単な使い方をするだけでもいくつかのコマンド( git add/commit/push/fetch/pull )を覚える必要があって勉強が大変ですが,すこしずつ慣れていきましょう. Git/GitHub は分散型バージョン管理であることから,ローカルのマシン以外にバックアップをとれることも利点です. (研究室外のサーバにおいてはいけないデータを扱う際にはGitLabなどオンプレミスな環境を利用しましょう.) kaityo256: GitHub 演習をやれば,以下にまとめたような用途で GitHub を使うには十分だと思います.

研究コードの管理

GitHub を使って

  1. 「正常に動く」コードを master/main ブランチに置く.
  2. 別ブランチで新しい機能を実装する/リファクタリングする/バグを取る.
  3. 新しいコードが正常に動作することを確認したら master/main ブランチにマージする.

を繰り返せば,常に正常に動作するコードを維持しつつ開発を進めることができます. また,

  • 適切な .gitignore を設定して中間ファイルやバイナリファイル等を無視する.A collection of .gitignore templatesに各言語などでのテンプレートがあります.
  • IssuePull Requestを使ってバグ報告や新たに実装したい機能を管理する.
  • GitHub Actionsを使ってテストし,バグを混入させないようにコードを開発する.
  • Wikiを使ってコードのドキュメントを維持する

など,GitHub の豊富な機能を使うとより効率的な開発ができるので,ぜひチャレンジしてみてください.

研究ノートの管理

日々の研究ノートをMarkdownで書いて GitHub でホストしておくと便利です. Markdown とは「文書を記述するための軽量マークアップ言語のひとつ(Wikipedia)」 で,

  • プレーンテキストで書ける(=Git で管理できる)
  • 見出し/箇条書き/強調表示など文章の構造化が容易である(WYSIWYG でない)
  • 表/数式/図の挿入など拡張も可能である
  • HTML や PDF などさまざまな形式へ変換できる

といった特徴をもちます. この文章も Markdown で書いたものを GitHub でホストしています. この利点を活かし,例えば:

  • 指導教員を collaborator に入れておき,進捗を可視化する.
  • 研究ノートを抜粋したものをMarpPandocでスライド化し,進捗報告の資料にする.
  • 日頃から書き溜めておいた内容を卒論や修論の LaTeX にコピペする.

といった使い方が考えられます.

論文執筆

LaTeX で論文を執筆する際も,GitHub を使って

  1. Issue に書くべき内容を書き出し,執筆計画を建てる.
  2. 別ブランチで執筆を進めたり共著者からの添削を反映する.
  3. latexdiff-vc を使って master/main ブランチとの差分 PDF を出力する.
  4. 満足いくものになったら master/main ブランチにマージする.

というワークフローを踏むことで効率的な執筆が可能になります. GitHub を利用した卒論・修論執筆について,

などが参考になると思います.


論文や教科書の読み方関連

乱流と情報理論の勉強方法(荒木に直接指導を受ける学生向け)

ここでは,私の指導のもとで研究を進める学生さんがどのように研究に向けた準備をしていくかをまとめます. 私の興味は乱流を情報理論の立場から理解することにあります. そこで,学生さんには乱流と情報理論を勉強してもらうことになります. それぞれ:

を参照してください. また,研究手段としては理論解析と数値計算を主とします(修士課程までは実験もやっていたのでまたやりたいところですが,いまのところ具体的なプロジェクトはありません). プログラミングについてはすでに数値計算コードの書き方で述べましたし,いくつかの言語の具体的な勉強方法はプログラミングの勉強を参照してください.

論文の探し方

あるトピックの先行研究を知りたいときは以下の手順を踏むとよい:

  1. 研究室の中で探す

    1. 知っていそうな先輩に聞く:その分野の重要な研究者・論文や「分野の流れ」を教えてもらえるかもしれません.
    2. 研究室の既発表論文を調べる:わからないときに教員や先輩に訪ねやすい.
    3. 関連する分野の教科書を読む:その分野を創始した論文や重要な発展に寄与した原著論文が引用されているはず.
  2. レビュー論文を探す

    レビュー論文とは,原著論文と教科書の中間の立ち位置で「あるトピックの過去数年〜数十年の進展」をまとめた論文のことです. 分野の概観をつかみやすいので,教科書の次に(あるいは教科書がないような分野なら最初に)読むのがおすすめです. 流体力学分野だとまずはAnnual Review of Fluid Mechanicsで探すとよいでしょう. 分野が違う人はAnnual Reviews 系列から探すとよいと思います. 他に流体力学(を含む物理学)系のレビューが載る雑誌には,

    などがあります.

  3. 原著論文を探す

    流体力学分野で定評のある雑誌には

    などがあります.

異なる論文雑誌から横断的に論文を探せるサイトは:

  • Google scholar

    「その論文を引用した論文」を網羅的に探しやすく,LaTeX で文献を引用する際に必要な .bib ファイルも(出版社のサイトでダウンロードできるものより)使いやすいと思います. お金を払わないと読めない論文もなんやかんや本文を読めるリンクが辿れたりします.

  • arXiv

    査読を経て出版される前のプレプリントが読めますが,「正式に出版された原稿」ではないことに注意しましょう(出版された論文では細部が変わっていることがよくあります). お金を払わないと読めない雑誌の論文も草稿段階の原稿がアップされていたりするので,うまく使いましょう. arXiv Xplorerで効率的に検索できます.

    流体力学関連はphysics.flu-dynの新着論文をチェックしていればよいです.

  • PerplexityElicitTypesetConsensus

    知りたいトピックを尋ねると 存在する 文献を挙げてくれる AI を使ったウェブサイトです. なお,ChatGPT は存在しない文献を実在するかのように紹介してくるので,論文探しには使わないようにしましょう. 他にもいろいろ便利なサービスが出てきているはずなので,見つけたら教えてください.

  • Connected Papers

    論文を入力すると,その関連論文の相関図を出してくれます. そのトピックの研究を概観したいときに便利ですが,無料版だとかなり厳しい回数制限があるので注意しましょう.

新しい論文を効率的にチェックするためには,上に挙げた雑誌の新着論文を RSS 通知で毎日確認するとよいです. 研究室のチャットツール(Slack,Teams 等)に RSS 通知をリンクすると,チャット上で議論することもできて有用だと思います(参考:Slack に RSS フィードを追加する).

論文の読み方

研究をするにあたって論文を読む習慣をつけることはきわめて重要です. 論文を読む際は,その研究の詳細を理解するのと同じくらい,大きな研究の流れにその論文を位置づけることが大切です. すなわち,kaityo256:論文の読み方にあるようにその論文を中心にしたより古い&新しい論文の樹形図を作ることを目標に論文を読むことが大切です.

論文を読む際,私は

  1. タイトル(で論文のリンクを踏むかどうかを決める)
  2. アブストラクト(で本文を読むかどうかを決める)
  3. 図(を順に見ていってどんな系を対象にしているのか,どんな量を解析しているのかを確認する)
  4. 結論(で自分が図から把握した議論と整合しているかを確認する)
  5. 結果・考察(で詳しい結果の議論と考察をフォローする)
  6. 手法(で理論的な背景をフォローする)

という順で読んでいます. これ以外にもいろいろな読み方があるので,自分にあった方法を見つけてください.

読んだ論文は自分の言葉でまとめておくと,卒論や修論でレビューする際にとても役に立ちます. いろいろな人が論文のまとめ方を紹介していますから,自分にあった方法を見つけるとよいでしょう. 例えば:

  • A4 一枚に背景,解いた問題,手法,主要なデータ,結論などをまとめる.
  • 論文を片面印刷して見開きの左ページに原稿,右ページにノートをとる.
  • LaTeX ノートを作って式展開をすべて埋める.

などの方法があると思います.

論文紹介の準備方法

研究室内での論文紹介の目的は,論文の読み方の繰り返しになりますが,その論文の内容を完璧にプレゼンすることよりも大きな研究の文脈上にその論文を位置づけることにあります(参考:kaityo256:論文紹介のやり方).

スライドづくりの一例:

  1. 白紙のスライドに論文の図表を 1 枚/1 スライドずつ貼る.
  2. それぞれの図の考察をまとめ,スライドに書きこむ.
  3. 理論など,図表以外の重要な情報のスライドを追加する.
  4. 重要な先行研究を調べ,文脈の理解に必要な図などを引用したスライドを追加する.
  5. 全体構成を見直し,本筋でないスライドを補遺に回す.

輪講の準備方法

輪講では,教科書をただ読み上げる(教科書の論理展開をなぞる)のではなく,教科書の内容を自分なりに再構成して講義できるように準備しましょう(参考:kaityo256:輪講の準備の仕方).

輪講資料づくりの一例:

  1. 教科書の該当範囲(とそれ以前の範囲)を読み,議論の流れを把握する.
  2. その教科書以外の資料を参照して内容を自分なりに再解釈する.
  3. 式展開や論理展開の行間を埋める.

研究の進め方関連

日々の研究室生活の過ごし方

研究室に配属されると,それまでの講義に出席することが中心の生活は大きく変わり,その多くを研究室で過ごすことになります. ここでは,研究室生活を有意義に送るための tips を紹介します.

  • 研究室に来て議論する

    COVID-19 パンデミックを経てリモートワークがある程度定着しましたが,研究についてはうまくいかない,というのが私の実感です. 自身の経験を振り返っても他者と議論することで研究が進んできました. とくに研究室に入ってすぐの時期は,一人で半日考えてもわからなかったことが先輩と議論すると簡単に解決してしまう,ということを経験すると思います. そこで,できる限り毎日研究室に来て先輩や教員,同級生と議論することを日常にしましょう. Open-minded で交流することが大事です.

  • とにかく手を動かしてみる

    研究を進めるにはいくつアイデアを出せるかがとても重要です. 教科書や論文を読むと「研究とはうまいアイデアから一本道に進んでいくものだ」と思うかもしれませんが,実際には膨大なアイデアを試しては失敗することを繰り返しつつ進んでいくのが研究です. そこで,研究室では「新しいアイデアを考えては試してみる」というサイクルを早く回せるようになることを目指しましょう.

  • つねに効率化を考える

    私はこまごました研究上の tips をryo-ARAKI: TIL(TIL:"Today I Learned",今日学んだこと)にまとめています. 皆さんも同様のリポジトリを作って「何度も参照するけどそのたびにググるのが面倒なこと」などをまとめておくと,備忘録にもなり後輩を指導する際にも「ここを見ておいて」で済み,とても便利です.

  • 指導教員以外のメンターをもつ

    学会や研究会,夏の学校などに積極的に参加し,研究室の外でたくさんのつながりを作ることを目指しましょう. 特に,自身の研究に所属研究室の外の視点からアドバイスをくれる第二,第三のメンターといえる先生や院生がみつかると素晴らしいと思います. そういった縁から共同研究に発展したりすることもあります.

    私自身の経験では,フランスの博士後期課程に在籍していたとき,年に一度自身とは異なる大学や研究機関の研究者と指導教員抜きの場で指導教員との関係や研究で詰まっている点について議論することが制度化されており,とてもよい仕組みだと感じました.

Note

TBA:

  • 先輩,指導教員へのよい質問のしかた
    • 自律した研究者を目指す:「自分で立てる」ではなく「自分を律せる」ようになってほしい
  • 参考になる(信頼できる)ネット上のリソース
    • Scholarpedia
    • ChatGPT など生成 AI との付き合い方

進捗報告の準備方法

研究を始めると,指導教員やメンターの先輩,ラボメートと定期的なミーティングをすることになると思います(参考:kaityo256:研究発表の仕方発声練習:良い進捗報告のやり方). 進捗報告では,うまくいった進捗と同程度にいま詰まっている問題点を共有し,その解決策を議論することを心がけましょう. 進捗報告の資料は次のように構成するとよいでしょう:

  1. 前回の進捗報告と,そこでの議論のまとめ

  2. 前回の進捗報告で述べた「今後の研究計画」

  3. 今回報告するトピックの一覧

  4. それぞれのトピックで

    1. 何を目的として
    2. 何を実行して
    3. 何が得られて
    4. どう評価・考察したのか

    をまとめる.

  5. 次回の進捗報告までの研究計画

資料を作る際は以下のことに気をつけましょう:

  • 資料作りに時間をかけすぎない.

    決まったテンプレートに図やグラフを並べたもので十分ですし,必要ならそこに手書きで書き込んでも構いません. Markdown でまとめた研究ノートMarpPandocでスライド化するのもよいと思います.

  • 資料は事前に指導教員やミーティング参加者に(PDF 形式で)共有する.

    ミーティング後には議論した内容を資料に追記し,これも共有するようにしましょう.

  • 月報を書く

    月単位でなくても良いですが,定期的に結果を論文に準じた形式でまとめておくと,卒論/修論の執筆がとても楽になると思います. また,このような資料を積み上げていくことで振り返ったときに自分の成長を感じることができる,というモチベーションにもなります.


対外発表や原稿執筆関連

原稿を書くときに共通の tips:

  • 木下是雄,「理科系の作文技術」,中公新書(1981)を読む.

    明快な文章を書くために必要なことがまとまっている古典的な本です. ある程度まとまった文章を初めて書く前に必ず読んでほしいです.

  • 読者層を規定してから書き始める.

    その原稿を読む人のレベルや分野(学部生/院生/研究者,そのトピックの専門家/同じ分野の人/違う分野の人)から,どこまでを前提条件としてよいかを考える.

  • 上から順に完成原稿を書こうとせず,何度も反復して徐々に全体の完成度を上げていくとよい.

    全体の構造を決める → 各部に書くキーワードを配置する → 文章を書いていく...と反復しつつ原稿の細部を詰めていくほうがよい原稿になると思う.

  • まず規定より長い文章を書き,それを規定分量まで削ぎ落としていく.

    とくに要旨など分量に規定がある場合に注意すべきこととして,規定の分量に届くまで引き伸ばした原稿は印象がよくありません. 規定のおおよそ 1.5〜2 倍の文章を書き,それを削っていくことで密度の高い「迫力のある」原稿を書くことができます.

  • 自身の議論を適切な数式で表現する.

    LaTeXを使った適切な数式の書き方について,松井勇佑,「工学系の卒論生のための数式記述入門」に目を通しておきましょう.

Note

TBA:

ICCFD のアブストを例に出す?

Gist で管理している LaTeX テンプレートのリンク集を以下にまとめています:

LaTeXテンプレート

学会発表の準備方法

研究がある程度進展したら,最新の結果を共有して議論するために学会で発表しましょう. 最初は身内の研究室で開催する内輪の研究会や登壇者を学生に限定した若手セッションで経験を積み,順次より大規模な学会や国際学会を経験できると素晴らしいです.

Note

TBA:

  • 発表する学会をどう決めるか?

発表タイトルの決め方

学会参加者はプログラムを見て気になる(聞きに行きたい)発表を決めるので,魅力的なタイトルをつけることは非常に重要です. タイトルの付け方の一例:

  1. 研究のキーワードをさまざまな視点からブレイン・ストームして書き出す.
    • 対称とする系,計算手法,注目するパラメータ,物理現象,応用先,...
  2. それらをいろいろに組み合わせて,発表内容をもっともよく表すタイトル候補を考える.
    • 単語に形容詞をくっつけていく,何かを主張する文にする,...

学会発表のタイトルがどんなものかわからない,という人は先輩や指導教員に過去の発表タイトルについて尋ねてみてください. 同じ学会の昨年度のプログラムを参考にするのもよいと思います.

発表要旨の書き方

学会によって長さは異なりますが,申込み時に要旨,あるいは講演原稿や予稿と呼ばれる数百字〜数ページの文章を書く必要があります. これは,タイトルを見て興味を持ってくれた人が発表を聞く前の予習として,あるいは発表を聞きながらその詳細を理解するために読む文章になります. 短いものは投稿論文のアブストラクト,長いものは短めの投稿論文の書き方を参考にするとよいでしょう(参考:投稿論文の書き方). また,同じ学会の昨年度の予稿集を参考にするのもよいと思います.

学会スライドの作り方

普段の進捗報告と異なり,学会発表では

  • 研究背景を必ずしも共有しない
  • 自分の話を初めて聞く

聴衆を想定して発表する必要があります. そこで,次の手順を踏んで発表スライドの第ゼロ稿を作るとよいでしょう:

  1. 一番主張したい結果を決める.
  2. 想定聴衆を設定する.
  3. それらに合わせて発表のストーリーを考える.
  4. 1 つのメッセージ/トピックを 1 枚のスライドに割り振り,全体の構成を決める.
    • 例:スライド 1 枚につき理解してほしい図を 1 つ載せる.
    • スライド枚数は(基本的に)1 分/1 枚とする.
  5. 各スライドに「それ単体で内容を理解するのに十分な」情報を書く.
  6. まとめスライドに"Take-home message"を書く
    • 「ご清聴ありがとうございました」スライドは 絶対に 使わない.

スライドのデザインや細かな注意点については伝わるデザインを一読しておくことを強くおすすめします.

学会ポスターの作り方

ポスター発表は,自身の研究に興味を持って聞きに来てくれた人と密に議論できるため,口頭発表とは違った利点のある発表形式です. ポスターの作り方には,大きく分けて

  • ポスター単体で理解できるように必要な情報をすべて盛り込む
  • アピールするトピックを絞って強調する

という二つの方向性があります. 私はいつも後者を目標にしていますが,どちらを選ぶかは好みだと思います.

Note

TBA:

ポスターの第ゼロ稿の作り方

ポスターのデザインについても,スライド同様伝わるデザインを一読しておくことを強くおすすめします.

ポスター作成時の tips をいくつか示します:

  • ヘッダーに自分の顔写真を入れておく.

    ポスターセッション以外など,自分がポスターのそばにいないときに興味を持ってくれた人とあとで繋がれる確率を上げることができます.

  • 追加資料へのリンクを QR コードにして入れておく.

    例えば動画や三次元可視化,プレプリントなど,研究に興味を持ってもらえた人にさらにアピールするための素材をクラウドの共有フォルダに準備しておき,そのリンクをポスターにいれておくとよいでしょう.

学会発表の聞き方

学会に参加するときは,まずウェブサイトや当日の受付でもらえるプログラムをみて聞きたい発表に印を着けましょう. 場合によっては発表ごとにセッションを移動することになるかもしれません.

発表を聞くときは,批判的に(critical に)聞くことを心がけましょう. これは発表の粗さがしをしながら聞くということではなく,

  • 自分がこの研究をしていたら何が気になるだろうか?
  • 自分の研究に役立てられる知見はあるだろうか?

といった点を頭の隅におきながら聞く,ということです. そうすると,質問も自然に浮かんでくると思います. 質疑応答中は,自分で積極的に質問するのと同時に他の聴衆からどんな観点からの質問が出たか,同じ疑問を自分は持てたかを振り返りながら議論に参加しましょう.

また,ラボメートが発表する際はどんな質問が出たか,ラボメートがどんな返答をしていたかのメモをとっておきましょう. 発表者は質問への対応でいっぱいいっぱいになってしまい,どんな質問が出たか,自分がどう返答したかも覚えていないことがあります!

この他に,「この人のスライド見やすいな/発表聞きやすいな」と思う発表者がスライドのデザインや発表にどんな工夫をしているのかを観察するのもとても大事です.

懇親会の活用方法

学会の懇親会は,場合によっては学会のセッションと同じくらい大事です. というのも,ここで作ったネットワークで共同研究が始まったり進学先,就職先が決まったりということが起きうるからです. なので,懇親会でラボメートとずっと一緒にいるのは非常にもったいない過ごし方だと思います. 例えば:

  • 発表に質問できなかった人と議論する.
  • 自分の発表に質問してくれた人と議論する.
  • 先輩・指導教員について回って他大の教員や院生を紹介してもらう.
  • 同じ分野・同じ学年の院生さんを見つけてネットワークを作る.

などを目標にするとよいでしょう. 参加者はみんな「他大学の人と話してみたいけどきっかけがないな...」と思っているのでがんがん話しかけに行って大丈夫です.

卒論・修論論文の書き方

執筆した卒業論文や修士論文,その口頭試問や公聴会で使うスライドを指導教員に見てもらう前に確認しておくべきことのチェックリストを,それぞれ

に準備しています.

投稿論文の書き方

研究結果がまとまったら,時期を逸せずに論文をまとめて学術雑誌に発表しましょう. とくに修士課程を出て就職する人で,十分な成果があったのに大学を離れてしまったために研究がお蔵入りしてしまう,という例を私自身たくさん見てきました. 自身が何年間かを費やした成果を世の中に発表しておくことはとても重要なので,例えば修士論文を書き終えた後であってもぜひ投稿論文の執筆に挑戦してほしいと思います.

Note

TBA

  • 投稿する雑誌をどう決めるか?

論文タイトルの決め方

論文の探し方で紹介したような方法で論文を検索すると,まずはタイトルのキーワードから読むか読まないかを決めると思います. すなわち,論文の内容を適切に表した魅力的なタイトルをつけることは自分の研究をアピールする上で非常に重要です. 基本的には学会発表のタイトルと同じように考えればよいので,発表タイトルの決め方を参考にするとよいでしょう.

アブストラクトの書き方

論文のアブストラクトは,タイトルで興味を持ってくれた人が本文を読むかどうかを決めるために読む大切な文章です. 基本的には以下の構成に従って,各項目を 1〜2 文ずつ書いていくとよいでしょう:

  1. 分野の背景と問題の定義
  2. 詳しい動機と先行研究
  3. リサーチクエスチョン
  4. 研究手法
  5. 主結果とその詳細
  6. インパクトと将来への展開

Nature のHow to construct a Nature summary paragraphという記事が非常に参考になると思います. ただし,これは 1 パラグラフのサマリーの書き方なので,1 ページ程度書ける場合は段落に分けることを忘れないようにしましょう.

本文の書き方

Note

  • 学位論文とは違う点
    • 文章や図や数式から冗長さを除去する

奨学金・研究費申請書の書き方

Note

TBA:

  • 「書けと言われていること」を書く.
  • 規定の枠・文字数の 9 割以上を埋める.
  • 模式図を効果的に使う.
  • 審査員と共有できる前提・背景分野の知識を調べる.
  • 自分がもらっていた奨学金のリンク

リンク集

研究者になろうと思う人へ,寺田寅彦の「科学者とあたま」という短いエッセイを紹介しておきます. これに限らず,寺田寅彦や中谷宇吉郎,ロゲルギストの随筆は非常におすすめです.

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